到達目標と講座概要
「人間はどうして衣服を着るのか」と問われれば、「恥ずかしいから」、「身を守るため」、「自分らしさを演出するため」と答える人は多いでしょう。でもそれは現代社会に暮らす私たちの理由であって、ホモ・サピエンスが本質的に衣服を着る理由ではありません。それについて考えようと思えば、着衣のはじまりを想像しなくてはならないでしょう。着衣のはじまり、それは毛皮でしょうか、それとも一本の腰紐でしょうか。いえ、それは〈文(あや)〉だったと考えます。〈文(あや)〉とは模様や形のことです。その模様や形を体表に描いたものこそが、ホモ・サピエンスの着衣のはじまりではないかと、私は考えています。では、それを身にまとうことで、ホモ・サピエンスに一体何が起こったのでしょう。またそれを起点とみなすことで、私たちの現代の着衣行動をどのように捉え直すことができるでしょう。本講座は、ファッションが地球環境を脅かす社会問題として捉えられている昨今にあって、着衣の起源にまでさかのぼり、その問題の一端を探していこうとする試みです。