到達目標と講座概要
近世以降、「遊女」との呼称に代表される娼婦が多くおり、売春防止法が施行される前世紀半ばまで我が国は公娼制度(準公娼制度)を維持していた。
様々な議論を巻き起こした美術展『大吉原展』がそうであったように、遊女はときに「ただの娼婦ではない芸能者」と持ち上げられ、反対に「性奴隷」と見做されるなど、評価が極端に分かれる。歴史とは、様々な見地から評価が変わるものだが、こと性売買/性搾取に対する評価が両極に分かれるそれ自体が、性価値観が大きく変化する現代社会の反映ではなかろうか。
従来、遊廓の地域数や遊女の人数などを挙げ、史実を定量化することで、実証的な遊廓史の理解を試みる書籍などが発行されてきた。いっぽうで、地域ごとの特色は分類されることで、かえって「例外」が埋没し、遊女とされた女性個人の尊厳は「数字」の中に置き忘れてしまっている感がある。
各地に残されている遊女の墓を通じて、当時の遊廓(遊所)を取り巻く地域社会との関わり、現代における地域住人による保存活動ないし忘れ去られている現状を紹介する。遊廓を観光資源として活用している実例地域の現状と問題も取り上げる。
なお、本講座は昨年も開催したが、昨年以降続けてきた取材した成果を加えている。