到達目標と講座概要
昭和21年、GHQの指示に基づき、公娼制度に関する一切の法令が廃止され、我が国の公娼制度は数百年に及ぶ歴史に一応の終止符を打った。しかしながら実態は、「自由意志に基づく売春」という建て付けで黙認、再編成され、「準公娼制度」と呼ぶに相応しいほど公然と営まれる娼街、すなわち赤線として『売春防止法』昭和33年に罰則規定を伴って施行されるまで、延命されることになる。
男性作家を中心に各界のクリエイターは哀別するかのように、昭和30年前後、多くの性売買にまつわる作品を残した。昭和21年にはこうした動向は見られず、対照的である。この意味で、形式上の公娼制度廃止は昭和21年であっても、社会通念上の廃止は昭和33年にあった。
本講座では、売春防止法前後の性売買を題材とした文芸作品を取り上げる。赤線だけではなく、「パンパンガール」と呼ばれた街娼など広く扱う。加えて、AIを用いた読み上げソフトを用いて、講義中に実際に作品を聴く。
文芸誌、週刊誌を中心に発表された性売買文芸は、作者のどのような意識を反映し、社会にどのように受け容れられたのか。現代からみた時代的限界、男女による描き方の比較、戦前と戦後作家の比較などを考察を加える。赤線を中心とした売春女性当事者の意識、性売買の実態などの背景も紹介する。
※9/5付で秋季の講座情報に更新しています。ご確認ください。